2012年02月29日

ソニーがアップルのようにヒットを生み出せなくなった本当の理由

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「ないものを創る」精神で、ウォークマンに代表されるヒット商品を生み出してきたソニー。

しかし近年は、「ソニーらしい」と感じさせる製品を生み出せていません。

「ソニーを買っておけば間違いない」と言われた強力なブランドイメージも、今では「ソニータイマー」(保障期間終了直後の故障が多いという噂)と揶揄されるようになってしまいました。

今日は、ソニーがヒット商品を生み出せなくなった理由を、一旦は低迷しながらも復活したアップルと比較しながら分析してみます。



1.営業畑の人が会社を動かすようになると、イノベーションが止まる



ソニーとアップルの沿革を見比べると、ある共通点に気が付きます。

それは、製品畑ではなく、営業畑の人が会社を動かしている時期に、共に低迷しているということです。

以下のスライド2枚を御覧ください。

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アップルでは、業績が低迷した時期と、ジョブズが会社を離れていた時期が、見事に一致しています。

ジョブズがアップルから一時追放される前はApple T、Apple U、Macintosh、アップル復帰後はiPod、iPhone、iPadと、時代を代表する発明品やヒット商品をいくつも生み出しています。

かたやジョブズが会社を離れ、広告・マーケティングが専門のジョン・スカリーが会社を動かすようになってからの10年間は、見るべきものがほとんどありません。



ソニーの場合も、創業メンバーや、創業時の精神を引き継いだ後継者が会社を動かしていた時期は、それぞれの時代の先端を行く商品を継続して生み出していました。

しかし海外営業畑出身の出井氏がソニー初の新卒サラリーマン社長に就任して以降、見るべきものはWEGAくらいです。

共通しているのは、会社を動かしているのが製品畑の人ではなく、営業畑の人になったとき、ヒット商品が生まれていないということです。



2.アップルが低迷した原因



なぜ両社では、営業畑の人が会社を動かしている時期に共通してヒット商品が生まれなくなったのか。

まずアップルで何が起こったかというと、良い製品を生み出すことと、儲けることの順番が逆転しました。

ジョブズは利益を出すことも重要だと強調していますが、それ以上に良い製品を生み出すこと、すごい製品で世界を変えることこそが自分たちの使命なのだと繰り返し述べています。

それは、「あの日、我々の目標はお金を儲けることだけでなく、すごい製品を作ることだとスティーブが言い切ったことをよく覚えています。」というジョニー・アイブのコメントからも見て取れます。



しかし1985年にジョブズがアップルを追放され、ジョン・スカリーが実権を握るようになると、良い製品を作ることよりも、儲けることを優先し始めます。

具体的に何が起こったかというと、Macintoshの改良をほとんどせず、利益率を上げることに専念し始めたのです。

始めは儲かりましたが、その後はMacintoshを模倣したWindowsに市場のシェアをあっさり奪われてしまいました。

また、会社の関心が売上数字に傾くに連れ、居場所を失った技術者やデザイナーたちは、会社を離れていきました。



3.ソニーが低迷した原因



次に、ソニーでは何が起こったのかを見ていきます。

ソニー創業時に作られた「会社設立趣意書」には以下のように、儲け主義に走らず、技術力を武器にした本質的な活動に重点をおくことが明記されています。

会社設立の目的
一、真面目なる技術者の技能を、最高技術に発揮せしむべき自由闊達にして愉快なる理想工場の建設
二、日本再建、文化向上に対する技術面、生産面よりの活発なる活動
(中略)
経営方針
一、不当なる儲け主義を廃し、あくまで内容の充実、実質的な活動に重点を置き、いたずらに規模の大を追わず
二、経営規模としては、むしろ小なるを望み、大経営企業の大経営なるがために進み得ざる分野に、技術の進路と経営活動を期する
(中略)


外部からは「ソニースピリット」と形容されることもありますが、創業者の精神が根づいていたときのソニーは、技術力を武器に日本初、世界初の製品を次々に作り、市場を牽引していました。

ソニーは市場があるから商品を開発・販売したのではなく、市場のないところに市場を作り出す商品を開発し、成長してきたのです。

ここに、今のソニーとの明確な違いがあります。



今のソニーがやっているのは、二番手商法です。

ブラウン管から液晶テレビへの切り換えもかなり遅れましたし、iPodとiTunesがヒットし始めてから慌ててデジタル音楽プレイヤーを自前で用意したものの(しかも、見た目はiPodのパクリで、中身はお粗末)、まったく戦える製品ではなく、なによりソニーならではの新しさがありませんでした。



なぜこうなったのかというと、目先の売上数字を作ることに最大の関心が向かい、新商品や新しい技術への投資ができなくなったためです。

コストカットのために主要な研究工場も閉鎖され、優秀な技術者はソニーではもはや良い研究は出来ないと退職していきました。

業績評価基準としてEVAが導入されると、目先の利益だけを追い求める体質はさらに濃くなり、会社は官僚化していきました。



4.エレクトロニクスに関心がない現ソニー経営陣



現在のソニーには、取締役が15名います。

そのうち、CEOであるストリンガーと副会長である中鉢氏をのぞく13名は、社外取締役です。

そしてこの13名は全員、エレクトロニクス事業に携わった経験がなく、AV機器に関する商品知識や技術に詳しいとは言えません。

加えてストリンガーもエレクトロニクスの出身ではなく、関心があるのはコンテンツビジネスです。



エレクトロニクス事業を根幹にする企業の意思決定が、エレクトロニクスを知らない人達によってなされている。

ソニーの低迷は、今後もしばらく続いてしまうのかもしれません。



5.イノベーションを仕組化することは出来ない



最近では、いかにイノベーションを起こすかということが各企業の課題となっています。

そのために、ビジネスカジュアルを採用したり、ホワイトボードを増やしたり、社員の意識改革に取り組んだりと、様々な施策が行われています。

しかし、これら小手先の手法をいくら取り入れたところで、会社を動かしている人達の関心が製品よりも売上数字に傾いているうちは、あまり意味がなさそうですね。

すごい製品を作るための議論ではなく、営業成績を上げるための会議ばかりが盛んに繰り広げられている、なんていうことがないようにしたいものです。



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posted by 河村 拓 at 11:00 | Comment(0) | TrackBack(0) | 問題解決に効くネタ
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